『子どもの権利条約』で謳われている「子どもの最善の利益」を日本において実現するため、ハーグ条約の真実を伝える活動を行っています

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菅政権に期待できるのか? EUが自問する「日本の子供拉致」問題

出典:令和2年10月7日 NewsPhere

菅政権に期待できるのか? EUが自問する「日本の子供拉致」問題

◆日欧間だけではない子供の拉致
 子供の拉致問題は、日欧カップルだけの問題ではない。国際離婚で起こりやすい問題を挙げる『ル・フランセ・プレス』は、同じ欧州内においても、片方の親がドイツ人であるとき、監護権の問題が発生しやすいことなどを指摘している。

 また、日本国内における日本人同士の離婚でも、上に挙げた単独親権が原因で、子供とのつながりを絶たれる親は多い。「日本では6人に1人の子供が片方の親とのコンタクトを完全に失う結果」(フランス2)となっている。フランス2のドキュメンタリーは、そうした日本の親を支援するNGO団体の様子もレポートしている。

◆守るべきは子供の利益
 子供と引き離された親の嘆きには身につまされるものがあるが、ハーグ条約および児童の権利条約に立ち返り、諸々の判断の根拠としなければならないのは、子供の利益、不利益である。

 たとえば2、3歳で日本に連れ去られた子供を例に考えてみよう。その子供は、どんな不利益を被り、何を失うのか? まず、生活環境が急激に変わることで起こる諸々の負担。失うものはさらに多い。会えなくなった親や親戚から注がれるはずだった愛情を直接感じる機会を失くす。元にいた国の友人との交流、そこから得られるはずだったものすべて。獲得するはずだった言語、文化、風習、価値観、経験、そのすべてを失うことになる。言ってみれば、自分のなかにあるもう一つの国の人間というアイデンティティそのものを失くす恐れがあるのだ。

 ハーグ条約が守ろうとしているのは、子供の権利なのである。親の都合ではなく子供の利益を優先させること。これを国際条約で定めた意義は大きい。その根底を忘れてはならない。

◆国際的な枠組みの取り決め
 これを重視し、国境を越えた子供の不法な連れ去りや留置をめぐる紛争に対応するための国際的な枠組みとして定められたのが、1980年に採択された「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約(ハーグ条約)」だ。同条約締結国はいまでは約100ヶ国に上る。日本はG8諸国のうちでは最も遅かったが、2014年に正式な締結国となった。

 ハーグ条約は、連れ去られることで起こりうる有害な影響から子供を守ることを目的に、「原則として元の居住国に子を迅速に返還するための国際協力の仕組みや国境を越えた親子の面会交流の実現のための協力について定めて」いる(外務省ホームページ)。

 また日本はハーグ条約締結に先立ち、1989年第44回国連総会において採択された「児童の権利に関する条約」も1994年に批准している。この「児童の権利条約」8条には、「締約国は、児童が法律によって認められた国籍、氏名及び家族関係を含むその身元関係事項について不法に干渉されることなく保持する権利を尊重することを約束する」ことが、また9条3項には「締約国は、児童の最善の利益に反する場合を除くほか、父母の一方又は双方から分離されている児童が定期的に父母のいずれとも人的な関係及び直接の接触を維持する権利を尊重する」ことが明記されている。

◆日本の不履行
 つまり、もしも国際結婚をして国外に住んでいた日本人親が、外国人親の了解を得ずに子供を日本に連れ去ってしまった場合、日本はその子を元の居住国へ戻すための「すべての適当な措置をとる」立場にあることになる。

 ところが、実際には、日本はこの義務を果たしていない。少なくとも諸外国はそう見ている。たとえば、ディディエ欧州議員は、「二国間カップルの別れに際し(中略)日本の当局は必ず子供の監護を日本人親にゆだねる」(ル・ポワン誌、9/25)と、欧州議会に報告している。同誌はさらに、「外国人親に子供を訪れる権利が付与されることは決してない。ヨーロッパの裁判官による決定が下されたときも、日本の裁判所はこれを強制することがない。ひどい例としては、日本人の親の家の前に現れたヨーロッパ人の親が、警察に逮捕されたこともある」(同)現状を報道している。これは明らかに日本が批准した条約に反するというのが、ディディエ議員の訴えだ。

 フランス2テレビ局は2019年、日本人親による子供の拉致問題のドキュメンタリーを放映した。元妻が連れ去った子供に一目会いたいと、限りある予算と時間のなかで言葉の不自由な異国で奮闘し絶望する父親たちの姿は、連れ去り側の親が拒否すれば、連れ去られた側の親は、子供に近づくすべを持たないという日本の実情をよく表しており、大きな反響を呼んだ。

◆欧州議会による対日決議
 批准した条約内容を守らない日本に業を煮やした欧州議会は今年7月8日、日本に対する厳しい決議を採択した。内訳は、賛成686票、反対1票、棄権8票という圧倒的多数による決議だ。その主張は次の通り。まず、欧州議会は、「日本の親による実子の拉致増加に危惧の念を抱く」。そうして、日本は「子供の拉致について国際ルールを遵守していない」と考え、日本に「連れ去られた側の親が(中略)子供たちに近づき訪問する権利について裁判所が下した決定を効果的に執行するよう強く要請する」。さらに、「日本の欧州連合国民である子供たちは、彼らの権利を保障する国際協定が提供する保護の恩恵を受けなければならない」ことを強調する。

 かなり厳しい表現で書かれたこの決議について、茂木敏充外務相は7月14日に記者質問に答える形で、「日本としてはハーグ条約の対象となる事案については、(中略)一貫して適切に対応してきている」と発言したのみだ。つまり、日本が国際規約を遵守していないという指摘は正しくないという認識を示した形だ。

◆共同親権と単独親権の違い
 この双方かみ合わない主張の根っこには、離婚後の親権制度の違いがある。日本以外の先進国では、離婚後も父母双方が共同親権を持つのが通常なのに対し、日本では離婚後は一方の親にだけ親権を認める単独親権制度をとっている。そのため、ほかの国では、到底あってはならない「拉致」を実行する親が、日本では罪に問われることすらない。フランス2の番組内でインタビューを受けた日本の法学者、山本和彦教授は、「子供の連れ去りを推奨しているわけではないが(中略)、これは我々の法制度の派生と言える」問題だと認めている。同教授の言葉は、日本の一般的な空気を良く表している。曰く「日本では母親による子供の連れ去りは誘拐とは見なされません。深刻な犯罪とは見られないのです。日本では「誘拐」とは呼ばず「遠ざけ」と呼ばれます。良いことではありませんが、犯罪でもないのです」というものだ。「法律の改正も必要だが、人々の意識を変えるのが先決だ」とも言えよう。

 実は、日本でも父母の離婚後の子供の養育のあり方を検討する動きはある。その証拠に、今年4月には「父母の離婚後の子の養育に関する海外法制調査結果」が法務省民事局から発表されている。ただ、その動きは速いとはいえず、法の改正を待っていては、現在連れ去られている子供たちは成人してしまうのではないかと思える。

◆日欧間だけではない子供の拉致
 子供の拉致問題は、日欧カップルだけの問題ではない。国際離婚で起こりやすい問題を挙げる『ル・フランセ・プレス』は、同じ欧州内においても、片方の親がドイツ人であるとき、監護権の問題が発生しやすいことなどを指摘している。

 また、日本国内における日本人同士の離婚でも、上に挙げた単独親権が原因で、子供とのつながりを絶たれる親は多い。「日本では6人に1人の子供が片方の親とのコンタクトを完全に失う結果」(フランス2)となっている。フランス2のドキュメンタリーは、そうした日本の親を支援するNGO団体の様子もレポートしている。

◆守るべきは子供の利益
 子供と引き離された親の嘆きには身につまされるものがあるが、ハーグ条約および児童の権利条約に立ち返り、諸々の判断の根拠としなければならないのは、子供の利益、不利益である。

 たとえば2、3歳で日本に連れ去られた子供を例に考えてみよう。その子供は、どんな不利益を被り、何を失うのか? まず、生活環境が急激に変わることで起こる諸々の負担。失うものはさらに多い。会えなくなった親や親戚から注がれるはずだった愛情を直接感じる機会を失くす。元にいた国の友人との交流、そこから得られるはずだったものすべて。獲得するはずだった言語、文化、風習、価値観、経験、そのすべてを失うことになる。言ってみれば、自分のなかにあるもう一つの国の人間というアイデンティティそのものを失くす恐れがあるのだ。

 ハーグ条約が守ろうとしているのは、子供の権利なのである。親の都合ではなく子供の利益を優先させること。これを国際条約で定めた意義は大きい。その根底を忘れてはならない。

更新 2020-10-10 (土) 11:05:58
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