『子どもの権利条約』で謳われている「子どもの最善の利益」を日本において実現するため、ハーグ条約の真実を伝える活動を行っています

中央当局

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国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約(ハーグ条約)に関する意見募集(パブリックコメント)の結果について

外務省ホームページ

1.経緯
 近年増加している国際結婚の破綻等により影響を受けている子の利益を保護する必要があるとの認識の下,政府は,5月20日付の閣議了解において,「ハーグ条約について,締結に向けた準備を進めることを決定。

 今回,パブリックコメントの形で意見募集に付した内容は,ハーグ条約に関する関係閣僚会議における了解事項等及びこれまでに開催された計2回の「ハーグ条約中央当局の在り方に関する懇談会」での議論を踏まえ,中央当局部分の法案の作成に向け論点を整理したもの。

2.取りまとめ結果
(1)意見募集期間:平成23年9月30日~10月31日
(2)意見募集総数:168件(団体20件,個人148件)
(3)意見の主な内容は以下のとおり。

第1 中央当局の指定
〈賛否両論あり〉
•法務省が中央当局となるべきであるとの意見もあった。

第2 子の返還に関する援助
1.返還援助申請
〈賛成意見のみ〉

2.返還援助申請を我が国以外の条約締約国の中央当局に送付する場合
〈賛成意見のみ〉

3.子の返還に関する援助の実施
〈賛成意見のみ〉

4.国内における子の所在の確知
〈賛否両論あり〉
•個人情報の提供の義務や子の所在特定のための手段については,DV被害者への配慮や個人情報の過度な流出の防止の観点から,提供すべき情報の範囲は明確にすべきとの慎重な意見があった一方,子の所在特定は中央当局に課せられた重大な任務であるとして支持する意見もあった。
中央当局へ集約された子の情報については,原則として例外事由を設けず,申請者及び相手国中央当局には提供すべきでないとの意見もあった。

5.子に対する更なる害又は利害関係者に対する不利益の防止
〈賛否両論あり〉
•子の再連れ去りを防止する観点から,中央当局が旅券の一時保管や新規発給を制限すべきであるとの意見や,出国禁止等の立法的措置を講じるべきであるとの意見があった一方,海外渡航の自由(憲法第22条)との関係で慎重な意見もあった。

6.子の任意の返還又は問題の友好的解決
〈賛成意見のみ〉
•裁判外紛争解決手続機関における調停手続を創設し,積極的に運用すべきとの意見や,外務省内に専門家チームを設置して対応すべきとの意見があった一方,外務省は司法機関ではないので,役割を限定し,既存の手続の紹介に留めるべきとの意見もあった。

7.子の社会的背景に関する情報の交換
〈賛成意見のみ〉
•条約の趣旨を実現するために必要な権限であるとしつつ,情報の提供は,裁判所からの求めがある場合に限定すべきである,情報の範囲や情報の提供依頼先が無限定に広がらないよう限定的に運用すべきである等の意見があった。

8.子の返還を得るための司法上の手続の開始についての便宜の供与
〈意見なし〉

9.法律に関する援助及び助言の提供についての便宜の供与
〈賛成意見のみ〉
中央当局は,我が国及び締約国の法制度(特に親権,児童虐待,DV等)に関する情報提供,専門的な弁護士リスト等の提供を行うべきであるとの意見があった。

10.子の安全な返還の確保
〈賛成意見のみ〉
•子の常居所地国の中央当局及び在外公館と連携することが重要であり,特にDV事案への十分なケアが必要との意見があった。

第3 子との接触に関する援助
1.接触援助申請
〈賛否両論あり〉
•返還援助申請の場合に準じた取り扱いとすべきとの意見があった一方,条約締結後の不法な移動のみを対象とすべしとの意見もあった。

2.接触援助申請を我が国以外の条約締約国の中央当局に送付する場合
〈賛成意見のみ〉

3.子との接触に関する援助の実施
〈賛否両論あり〉
中央当局は,子の最善の利益の観点から,条約締結前に連れ去り又は留置があった事案についても,できる限り支援をすべきとの意見があった一方,子との接触に関する援助の範囲や具体的措置については,子の所在の確知及び友好的解決の促進にのみ留めるべき,子の社会的背景に関する情報の交換を支援の範囲に含めるべきでない等の意見があった。
中央当局が国内の既存の面会交流の制度を紹介できるよう,また,充実した面会交流が可能となるよう制度を整備すべきとの意見があった一方,中央当局は司法機関ではないので,活動は限定すべきとの意見もあった。

第4 不服申立ての制限
〈一般的な意見のみ〉
•申請が却下された場合には,行政不服審査法上の不服審査の申立て,又はそれに準じた手続を認め,他方でTPの人権を直接制限するような手段については不服審査の申立てを認めるべきとの意見があった。

第5 その他
•邦人の支援体制(DV・児童虐待等への対応を含む)を強化すべき,在外公館で受けた被害者による相談や連絡内容が国内における裁判所からの照会に応えられるようにすべきとの意見があった。
中央当局が返還裁判等の事例の実態調査をする制度を国内法の中で定めるべきとする意見があった。
•不法な子の連れ去りの罰則化,共同親権の制度化,面会交流制度の改善といった既存の国内法制度の改正の必要性につき指摘があった。
•DV及び虐待被害を懸念し,女性の安全の確保,子の意見を尊重する仕組みが必要であるとの意見がある一方,現在の制度では,DVが容易に認定され易く,冤罪が増加傾向にあることにも留意すべきとの意見があった。
•我が国がハーグ条約を締結することへの賛否両論があった。
ハーグ条約を実施するために同条約の目的と精神を認識した法律を制定し,不法に連れ去り又は留置された子の常居所地国への速やかな返還を促進し,他の条約締結国の法律に基づく監護の権利及び接触の権利を効果的に保護するよう促すとの意見があった。
(注:なお,法務省が行った「ハーグ条約を実施するための子の返還手続等の整備に関する中間とりまとめ案についての意見募集」に寄せられた意見には,外務省に寄せられた上記内容と同様の趣旨の意見もあった。)

外務省「ハーグ条約中央当局の在り方に関する懇談会」資料

第4回会合(平成23年11月22日開催)

外務省ホームページ

1.出席者
座長:小早川光郎・成蹊大学法科大学院教授
出席者:棚村政行・早稲田大学法科大学院教授
 藤原靜雄・中央大学法科大学院教授
 相原佳子弁護士(日弁連)
 杉田明子弁護士(日弁連)
 関係府省庁(法務省,内閣府,厚生労働省,総務省,文部科学省,警察庁)等

2.議事要旨(議事録は,別途掲載予定)

(1)パブリックコメントのとりまとめ結果の報告
 事務局から,外務省として9月30日から1か月間実施した,ハーグ条約を実施するための中央当局の在り方に関するパブリックコメント(意見募集)の結果に関し,計168件の意見が寄せられ,中央当局の権限や中央当局としてとるべき措置等につき様々な立場からの意見が寄せられた旨報告を行った。(詳細については,3.(1)パブリックコメントのとりまとめ結果及び概要を参照)

(2)子の所在の確知のための情報提供義務
中央当局が得た情報がLBP側に渡らないことが明確であれば,たとえば民間の団体たる私立学校と公立学校の間で情報提供義務に差をつける必要はなく,また差が出ることによる問題が生ずるのではないか。その一方で,情報提供義務を負う機関が広がることとのバランスで慎重な検討も必要。いずれにせよ,民間機関への情報の提供を求める場合,その範囲,方法については,政省令やガイドライン等で明確に定めることが必要。
•関係機関が中央当局に対して情報提供する際にDV被害のおそれがあるか否かについても併せて中央当局に通知することに関し,現場が何をどこまでやらねばならないのか,どう責任を取るのかが不明確なままでは,現場が委縮するので,そうならないように情報の流れが確保される具体的な通知の在り方について,今後関係機関内での実務的な検討が必要。他方,この点は,相手方の同意があった場合に情報を外部に提供するとの前提であったので中央当局としてDVのおそれの有無の情報が必要であったが,その必要がなくなったのであればそもそも中央当局にその情報を通知しなくても差支えないのではないか。
•情報提供を行う機関等が,「現に子を監護すると思われる者」か否かを判断することは難しく,外観上判断しやすい文言がより適当ではないか。なお,法制審で議論されている相手方適格の要件とは必ずしも同じ用語である必要はない。実態上,関係機関が,子を監護している者であるかどうかの判断を行うことは非常に困難であることからも,「監護する者」を「同居している者」としてはどうか。
•相手方となるべき「子を現に監護する者」の氏名(祖父母も含む)を申請者に開示後,相手方にその旨を知らせるべきか否かについては,さらに子が隠避されるといった事態を惹起するおそれもある一方で,DV被害者の居所の判明につながりかねないため,通知が必要とも考えられる。この点については,法律に明記せずとも対応できるのではないか。
中央当局が集めた情報につき,行政機関個人情報保護法第8条第1項の「法令に基づく場合」により目的外提供できるとすることでは,弁護士法に基づく照会も該当することにならないか。その範囲が広くなりすぎるおそれもある。目的外提供の範囲につき絞ることも検討すべきではないか。

(3)子の任意の返還その他の問題の友好的な解決の促進
•条約に定める友好的な解決の促進のために,外務省として仲裁等の任意解決を外部団体に委託したいと考えるが,そのような団体の発掘・育成が検討課題。
•友好的な解決のために双方の合意があった場合に,返還手続の前後に関わらず中央当局が旅券を保管することは問題ない。ただし,返還に係る裁判手続が始まったら,合意がなくなったものとして保管を中止して,当事者に返付するケースもあるだろう。いずれにせよ,当事者の合意に基づく措置に過ぎず,合意の撤回があれば返付するということかと思われる。
•返還手続における保全的な処分との関連で,出国を差し止めるためにいかなる手段が可能かは今後の法制審にて引き続き検討。

(4)子の社会的背景に関する情報の提供
•当事者が自らの裁判に必要と判断する情報を提供されるべきとの観点から,我が国中央当局から他の条約締約国の中央当局に,子の社会的背景に関する情報の提供を求める際は,裁判所からの求めだけでなく,申立人及び相手方からの依頼による場合も認めるべきではないか。
•他方,上記については,我が国中央当局及び他の締約国中央当局の事務的負担との関係から困難がある他,我が国と他の締約国との間で片務的な関係とならざるを得ないこと,相手国中央当局がどこまで社会的背景に関する情報収集に協力するか不明であること,相手国中央当局の情報収集結果を待っていれば迅速な裁判を確保できないおそれがあること等,現実的な問題として限界があることも事実。

(5)接触の権利に関する中央当局の措置
中央当局による援助の対象となる事案の範囲,及び中央当局がとるべき措置の範囲については,論点ペーパーの整理とすることで特段の意見なし。特に,援助の対象となる事案の範囲としては,他の締約国で認められた接触の権利を我が国において尊重されることを支援する(その逆も然り)と整理。
•ただ,接触の権利についての支援は,当事者の協力が前提となることから,接触の権利の実施体制の確立(中央当局から当事者に紹介する実施団体の発掘及び育成含む)は大きな課題。
•他の条約締約国は条約締結後20~30年の年月をかけ,接触の権利の実施体制を整えてきた経緯がある。我が国も締結後,直ちに十分な体制を確立するのは難しくとも,関係行政機関が連携しつつ,面会交流を支援する団体等の育成に努めて欲しい。

(6)事務局からの謝辞
 鶴岡総合外交政策局長から,今回のパブリックコメントに意見を寄せていただいた方々に対する謝辞を述べた。

3.配布資料
(1)パブリックコメントのとりまとめ結果及び概要パブリックコメントで寄せられた意見(PDF)
(2)論点ペーパー(PDF)
(3)参考資料
  • 法制審議会ハーグ条約(子の返還手続関係)部会概要報告(PDF)
  •「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約(仮称)」を実施するための子の返還手続等の整備に関する中間とりまとめ(PDF)

第3回会合(平成23年10月24日開催)

外務省ホームページ

 24日,外務省において開催されたハーグ条約中央当局の在り方に関する懇談会第3回会合の概要は以下のとおり。

1.出席者
座長:小早川光郎・成蹊大学法科大学院教授
ヒアリング対象者:池田崇志弁護士(大阪弁護士会)
鈴木雅子弁護士(東京弁護士会)
川島志保弁護士(横浜弁護士会)
谷英樹弁護士(大阪弁護士会)
出席者:棚村政行・早稲田大学法科大学院教授
藤原靜雄・中央大学法科大学院教授
大谷美紀子弁護士(日弁連)
相原佳子弁護士(日弁連)
杉田明子弁護士(日弁連)
関係府省庁(法務省,内閣府,厚生労働省,
文部科学省,警察庁)等

2.議事要旨(議事録は,別途掲載予定)
議事概要
(1)ヒアリング
(ア)池田崇志弁護士

  • 実際に受任した国際的な子の連れ去り案件(外国から日本に連れ去ったケース)の概要及び外国と我が国のそれぞれの裁判所の判断の要旨について説明。
  • 一般的に言われている「DVの主張」は,きちんと事実関係を把握する必要がある。この事案では,母親から父親によるDVが主張されたが,我が国裁判所の審判は,そのような事実は無かったと認定。
  • LBPは,子を常居所地国に返還することを求めたい場合であっても,子との面会交流が実効的に確保されるのであれば,TP側と合意できるケースも多数ある。中央当局として面会交流が実現できる支援をしてほしい。また,政府全体として,我が国における面会交流が実効的なものとなるよう制度構築を進めて欲しい。

(イ)鈴木雅子弁護士

  • 日本は出国を止める制度がない一方で,親権を争う仕組み及び保全措置についても時間がかかるため,国外に連れ去られ,打つ手がなくなる問題が生じやすい。連れ去られた後にハーグ事案として返還・接触申請を行うことは,物理的,精神的,経済的な負担が大きいため,出国を差し止める制度が必要。
  • ハーグ条約を連れ去られ親が使うためには,監護権の侵害が認められることが必要であると理解しているが,日本民法では,(1)離婚後は共同親権制が取られず,(2)事実婚・認知の場合にも,母親のみが単独親権を有する制度となっているために,連れ去られ親が子を事実上監護している場合でも,法律上の監護権がないためにハーグ条約を使えないという事態が相当数生じることを懸念している。
  • 海外において日本がハーグ条約を未締結のため日本への帰国が認められないことから,最後の手段として連れ去ったケースや連れ去りが犯罪化されているために常居所地国に戻りLBP側と話し合えないケースもある。仮に我が国裁判所で返還拒否が確定すれば,ハーグ条約締結によってDVに苦しむ女性を助けやすくなるという側面もある。
  • 妥当な解決を図るため,ADRや調停制度の活用が必要。外国籍の調停委員が認められていない現状は改善の余地あり。調停を行う際に外国の生活・文化のバックグラウンドが必須であり,当事者の気持ちの面でも重要。また,日本の裁判が書面を含め全て日本語という制度が変わらないのであれば,より一層ADRや調停制度の活用が求められる。連れ去られ案件では,連れ去られ国での裁判のための支援も検討すべし。

(ウ)川島志保弁護士

  • DV加害者は,一見DVをするように見えないタイプであることが多いほか,DVは再犯性が高いため,状況が改善されることは少ない。他方,DVが原因で夫の元から離れた妻は,居所を夫に知られる恐怖から,ひたすら逃げ回らざるを得ないケースが多い。このような事態は,子の福祉の観点からも問題。
  • DV被害者の個人情報の取扱いにつき保護措置があるものの,行政のミスにより被害者の個人情報が漏洩するケースもある。ハーグ条約加盟にあたっては,個人情報の保秘のための公的機関による連携が重要。DVの被害者としては,DV加害者に居所が知られることが最も恐れる事態。情報を知るべき立場の者までは,確実に知る必要はあるが,そこから先への管理をしっかり行うことが重要であり,中央当局からDV加害者側に所在情報が渡らないことが極めて重要。
  • ハーグ案件の場合には,証拠が海外にあることや,言葉の問題等から,被害者の証拠の収集が難しいことがあるため,在外公館への相談を証拠として活用できるような措置が必要。

(エ)谷英樹弁護士

  • 子の連れ去りによって生じる問題は,(1)それまでの環境(両親,家族,知人友人等)から子が引き離される,(2)それまでは両親の双方の監護に服していたり,別居中でも一定の枠組みの下での交流が認められていた状態が,一方的にルールなき状態に追いやられる,(3)連れ去る側は,種々の理由で他方が子と面会する機会を拒もうとするのが通例で,子との面会交流の可能性は連れ去り側の意志に左右されがち,(4)現行のDV保護制度は,DV保護命令の有無で,子との面会の機会の有無が決まる建て付け,が挙げられる
  • 子の所在の特定に関しては,本国で監護の権利を有するLBPにも連れ去り先の子の監護に関する情報を知るべき立場にあるとの考え方に立てば,パブコメ案では,申請者(LBP)に居所についての情報を提供する際に,一律にTP側の同意を要件としている点に強い疑問がある。また,子の社会的背景に関する情報の交換にも,同意を要件としているが,仮にTPが虐待をしている場合,その情報が児童相談所等に蓄積されていても,その情報は提供されないこととなるのは問題。
  • 子に対する更なる害の防止に関しては,居所変更の届出を義務づける必要がある他,国外への出国を防止する制度を創設すべし。接触の権利に関しては,子の居所をLBPが知ることは交流の第一歩であり,社会的背景に関する情報についてもLBPに提供すべし。

(2)質疑応答にて出された意見・質問等
(ア)出国禁止命令

  • 子の更なる害の防止の観点から,裁判所が保全命令の一環として出国停止を命じ,出入国管理での出国制限をとれる制度の構築が必要。このような措置がないために,面会交流が実現できないケースもある。

(イ)接触の権利(面会交流)

  • DV被害者をきちんと保護し,更なるDV被害から確実に守ることによって心理的な安定が確保され,それがひいては子とLBPとの面会交流につながるケースもあり得る。
  • 調停員は,日本人に限るべきではなく,調停では日本語以外も使用できる制度にすべし。ADRのような制度を利用する必要がある。

(ウ)その他

  • 実務家として,国際離婚の事案において問題と感じる点は,(1)我が国が,共同親権制でないこと,(2)面会交流が法的な権利として認められていないこと,(3)家裁調停員には高齢者が多く,母親の下での養育が良いという伝統的な固定観念を持つ人が多いこと等が挙げられる。
  • 明らかにDVが証明できるのであれば,国内担保法において,具体的にDVや暴力を返還拒否事由に要件として規定しても良いが,現実には,DVを証明することが難しいケースも多い。子にとって悪影響があるかという視点から返還拒否事由を考えるべし。 

第2回会合(平成23年9月13日開催)

外務省ホームページ

 13日,外務省において開催されたハーグ条約中央当局の在り方に関する懇談会第2回会合の概要は以下のとおり。

1.出席者
座長:小早川光郎・成蹊大学法科大学院教授
出席者:棚村政行・早稲田大学法科大学院教授
藤原靜雄・中央大学法科大学院教授
大谷美紀子弁護士(日弁連)
相原佳子弁護士(日弁連)
杉田明子弁護士(日弁連)
関係府省庁(法務省,内閣府,厚生労働省,総務省,文部科学省,警察庁)等

2.議事要旨(議事録は,別途掲載予定)
議事概要
(1)総論,援助を求める申請

  • 中央当局に対する他の機関による協力の重要性は,締約国会議でも確認されているところであり,法律案においても種々の国内機関による中央当局への協力を明示すべし。
  • 援助の申請ができる者の範囲は,自らの監護権が侵害されたことを主張する者,団体,機関に限られるのか,それとも,監護権の侵害があったと主張する者一般にも援助の申請が認められるよう制度設計すべきか,条約の規定の解釈の再確認が必要である。
  • 援助の申請に必要な要件を明記すべし。

(2)子の所在特定,個人情報の保護,更なる害の防止等,任意の返還等

  • 子の所在特定のために他の行政機関等から提供を受けるとの点を法律上明記するとの方向性は妥当である。
  • 関係機関が中央当局に情報提供する際に,当該情報の中央当局への提供につき本人(子及び子を監護する者)の同意が必要との構成にすることは,条約の趣旨にも鑑み適当とは言えない。また,TPが子の所在を隠す手段となりかねない。
  • 中央当局による要請を受けた関係機関が保有する情報を中央当局に提供することにつき義務とすべきかについては,そうしないと中央当局が必要な情報を収集できないおそれがある一方で,個人情報の慎重な取扱いの要請という側面も考慮する必要がある。個人情報を中央当局に提供する側(地方公共団体等)からすれば,提供することについての根拠規定があることが重要である。行政機関同士の関係では相互に協力すべき関係にある。
  • 中央当局による子の所在情報の収集にあたっては,初めから全ての関係機関に情報提供を求めるのではなく,段階的に情報収集に当たることが適当である。
  • 中央当局が収集し,関係機関が提供すべき情報の種類や範囲を明確にする必要がある。
  • 中央当局が収集した子の所在情報は,原則として他国の中央当局や申請者に共有しないことは,DV保護等の観点から極めて重要である。さらに踏み込んで,中央当局から他国中央当局・申請者には全く共有しないとの制度設計もあり得る。
  • 子に対する更なる害の防止の観点から,現行法にはない再連れ去りの防止のために出国停止や旅券の一時保管といった強制力のある措置の創設を検討することが必要である。

(3)子の社会的背景に関する情報の交換,子の安全な返還の確保

  • 相手国中央当局がどういう目的で,社会的背景に関する情報の提供を要請するのか,例えば先方中央当局の裁量に基づくものなのか,相手国裁判所に当該情報の提供が求められているのか等の場合を分けた上で,対応ぶりを検討すべし。
  • 社会的背景に関する情報として最も必要とされる情報は,学校,健康状況,経済状況等であることが多いが,子の所在情報と同様,どの範囲・項目の情報を相手国中央当局に提供するのかを明らかにする必要がある。
  • 本人が知らない情報を我が国の行政機関が保有する場合もあるが,その場合への対応には,例えば中央当局への提供時に本人の了知・不知につき明記してもらう等の工夫が必要である。また第三者に関する情報が含まれる場合の取扱いに注意が必要である。
  • 相互主義的な観点から,嘱託事案についても相手国中央当局に内容の伴う必要十分な情報の提供を要請すべし。
  • LBPの代理人を務める立場からすると,相手国中央当局から社会的背景に関する情報の提供がなされないとなると,実質的に弁護活動に支障が出る。
  • 子の返還に際し,在外公館を通じた支援を行う等の検討はできないか。
  • 子の安全な返還の観点に関し,逮捕状の発布の有無等の捜査関連情報は,どの国でも途中段階で他の機関と共有しないのが通常であり留意が必要である。

(4)接触の権利

  • 関係省庁・裁判所等と協力しつつ面会交流を支援する機関及び人材の養成が重要で,受け皿の仕組みの構築の推進が必要である。
  • 接触の権利の享受又は行使の支援を受けられる者についての要件,特に不法な連れ去り又は留置の要否や子の国境を越えた移動がない場合への対応の可否といった条約の解釈につき再確認が必要である。

(5)不服申立て等

  • 中央当局が外国にいる者からの申請を応諾した場合に,その応諾自体についてのTPによる不服申立ての可能性についても検討が必要である。他方で,迅速な返還の実現という条約の基本理念との関係で,途中段階での不服申立てが有益かという点も考慮が必要である。

(6)その他

  • 子の監護権,連れ去り,DV,児童虐待等に関する外国の法令,判例及び統計等に関する情報の収集について支援すべし。
  • 国際結婚する人へのハーグ条約に関する周知・広報をなるべく早い段階で始めるべし。

第1回会合(平成23年7月27日開催)

外務省ホームページ

 27日,外務省において,ハーグ条約中央当局の在り方に関する懇談会第1回会合が開催されたところ,概要以下のとおりです。
 この懇談会は,国際的な子の奪取の民事上の側面に関する 条約(ハーグ条約)に関する関係閣僚会議における了解事項等を踏まえた同条約締結のための国内担保法案の作成に向け,外部の有識者等から広く意見を聴く場として立ち上げられました。

1.出席者
 本日の会合には,座長を務めることとなった小早川光郎・成蹊大学法科大学院教授のほか,棚村政行・早稲田大学法科大学院教授,藤原靜雄・中央大学法科大学院教授,日弁連から大谷美紀子弁護士及び杉田明子弁護士,関係府省庁(法務省,内閣府,厚生労働省,総務省,文部科学省,警察庁)等の関係者が出席しました。

2.山花政務官ご挨拶要旨
 本年5月にハーグ条約の締結に向けた準備を進めることが閣議了解されたことを受け,外務省は法務省とともに国内担保法の作成作業を進めている。法務省が司法手続部分につき法制審議会を開始したのに続き,外務省としても中央当局のあり方につき透明性を確保した議論を行うために本日懇談会を立ち上げることとした。子の福祉に資するような良い制度の策定に向け政府一体となり議論を進めていきたい。

3.議事要旨(詳細の概要については,別途掲載予定)
議事概要
(1)総論・中央当局として必要な権限や体制整備

  • 中央当局は各締約国がハーグ条約の趣旨を実現するに際して極めて重要な機関であるともに,国際協力を行う役割も要求される。返還に関する司法判断と中央当局による対応は,ハーグ条約実施のための車の両輪。他方,種々の制約を踏まえ,実現可能な制度が必要。
  • 中央当局の制度設計に際しては,国内各機関との連絡調整及び各行政機関間での横の連携をいかに確保するかが極めて重要。中央当局の任務を全うするためには外務省にすべてを押し付けるのではなく,外務省が各府省庁の協力を得てこれらが有する知見を集めたオールジャパンの対応が必要。

(2) 子の所在の特定及び個人情報保護との関係

  • 中央当局が条約上の任務を遂行するにあたり,日本国内の各省庁や自治体から必要な情報を入手できないと,ハーグ条約締結に向けた制度設計は不可能。
  • 子の所在の特定につき措置を取ることは,返還にかかる司法手続を実効的なものとするための鍵。中央当局がもつべき情報が,中央当局にきちんと集まるよう,国内担保法に明確な権限規定を盛り込む必要がある。ハーグ条約実施のためという目的をはっきりとさせた上で根拠規定を置く必要がある。
  • 各行政機関等間の情報共有が必要となるが,実効的な情報共有の促進と個人情報の保護との両立につき十分議論する必要がある。子の所在特定等にかかる情報の入手といった中央当局の権限については,担保法において一般的な根拠規定を置きつつ,個人情報の慎重な取扱いの担保方法も十分考慮すべきである。
  • 中央当局が得た情報をどこまで残された親(LBP:Left Behind Parent)に開示するかにつき議論が必要。任意の解決の促進の向けた最低限の信頼関係の構築のために中央当局として何をすべきか検討すべき。

(3)在外公館による支援

  • 在留邦人への在外公館による支援という観点も関心が高い。また,常居所地国に返還した後の子のフォローアップも検討して欲しい。

(4)諸外国の法制度等調査等

  • 各国の監護権に関する最新の法令,判例,実務等やDV保護法制や子供の保護についての制度につき,中央当局で調査収集,翻訳の上,共通資料として実務家等の間で利用可能にすることを検討願いたい。このような知見の集約にあたっては,中央当局がすべて用意するということではなく,関係省庁,日弁連,研究者等のネットワークで対応にあたるべき。

(5)任意の解決の促進等

  • 条約の理念としては,返還にかかる司法判断に至る前段階で,任意の返還や友好的な解決を得ることが最も望ましいものであり,それにつき独立の条項で規定されたハーグ条約第10条は重い意味を持つ。他方,任意の解決を中央当局自身が行う義務を負うとの趣旨ではなく,最も適当な機関にそれを担ってもらうことが中央当局の任務。
  • 任意の解決の促進につき,外務省がノウハウを持つ立場にはないことは明らか。裁判所や調停協会等,これまでの調停の実務を担ってきた者が,ハーグ案件における和解を支援する組織を作っていき,これを中央当局が支援していく方が現実的ではないか。

更新 2011-12-09 (金) 00:10:19
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