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ハーグ条約の執行を円滑に
出典:平成30年6月30日 日本経済新聞
国際結婚の破綻などによる夫婦間の子どもの引き渡しを迅速にするため、法制審議会(法相の諮問機関)は29日、民事執行法部会で議論を開始した。国境を越えた子どもの引き渡しを定めるハーグ条約に沿い、裁判所に引き渡しを命じられた親の立ち会いがなくても、申し立てをした親がその場にいれば保護を可能にする。子どもの意思をどう尊重するかが課題となる。
1983年に発効したハーグ条約は子どもをめぐる国境を越えた争いを解決するルールを定める。2018年6月21日時点で98カ国・地域が加盟している。一方の親が他方の親の同意なく、国をまたいで子どもを母国に連れ帰った場合、元の居住国に戻す「強制執行」の手続きを定める。慣れ親しんだ国にまず戻し、子の育つ環境を裁判や当事者間の協議で決める。
法制審が29日に示した新たなルールのたたき台は、子どもの心情に配慮し、執行官が無理やり子どもを引き離せない規定は維持した。返還を拒む親の説得や自宅の捜索は可能となるものの、子どもを力ずくで連れ出すなど「威力の行使」は認めない。米国や英国と比べると強制力が弱いとの批判もあるが、子どもの精神面への影響を防ぐことを最優先する。
両親の関係が破綻する中で、子どもの意思をどう酌み取るかは大きな課題だ。国際結婚が破綻した場合、実際の親権や子どもが育つ環境については元の居住国へ帰国後、決める。もう一方の親の同意なく連れ帰った親が裁判で「子どもの意思だった」と主張することもある。強制力を高めた結果、子どもの意向が度外視されないよう、生育環境には最大限配慮する。
上川陽子法相は29日の閣議後の記者会見で「子どもが混乱しないよう、心身の負担に最大限配慮する」と強調した。執行官などが「子の心身に有害な影響を及ぼさないよう配慮しなければならない」との規定を盛り込む方向だ。
政府は早ければ19年の通常国会に、国内の夫婦について明文化する民事執行法と、国際事案についてのハーグ条約実施法の改正案を提出する。
更新 2018-07-07 (土) 12:44:16
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