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子の奪い合い、歯止めかかるか ハーグ条約に日本加盟
出典:平成26年4月1日 毎日新聞
結婚が破綻(はたん)した夫婦のどちらかが国外に子どもを連れ出し、相手から返還を求められた場合、原則、子を元の居住国に戻さなければならなくなった。日本が1日、ハーグ条約に加盟したためだ。国際結婚した日本人の離婚は年約2万件。国境を越えた子の奪い合いに、歯止めはかかるのか。
「日本は、ハーグ条約に加盟します。私には、娘に会う権利があります」。先月、千葉県の女性(34)は、娘(14)と暮らす米国人の元夫の両親に手紙を送った。「彼女は米国市民。二度と連絡しないで」。メールで返事が届いた。
元夫とは九州の米軍基地で出会い、妊娠して結婚したが、生活費を渡してくれなかった。紙おむつも買えず、基地内にある病院の乳児健診で「虐待している」と疑われた。元夫は2001年、女性に無断で当時8カ月の娘を米国に連れて行き、両親に託した。
2年後、女性は元夫の両親の家をつきとめ、娘に会いに渡米。その後、娘に会えたのは3回だけで、5年前、完全に拒まれた。
条約は、子どもの返還については今月1日以降の事例から適用されるが、それ以前の事例でも、子との面会について、国が居場所の特定などで支援できる。
「日本もハーグ条約加盟で、やっと米国と同じ土俵に立てる。対等な立場で交渉してほしい」。外務省を通じて、面会交流を求める書類を米国に送る予定だ。
一方、日本人の元妻に、娘3人を連れ去られたカナダ人男性(43)。11年に日本へ移住し、昨年は3回、娘たちに会えた。だが、事前に連絡すると拒まれる。面会はいつも「突撃」だ。「条約加盟で面会しやすくなると思う。法的に守られた状態で、子に会いたい」
日本に条約加盟を強く働きかけてきた米国。国務省が「子どもが日本に連れ去られた未解決事案」と認定しているのは58件、80人で、国別ではメキシコ、インドに次ぐ。米議会では、取り組みが不十分な加盟国に制裁などを科せるようにする法案が審議中だ。
■「国内」は対象外、法整備求める声
日本人の場合、海外で夫からの家庭内暴力を受けるなどし、逃げるように帰国した女性が多いとされる。この場合、外国の親からの申し立てで、外務省が子の居場所の捜索や、仲裁機関の紹介などの支援を担う。
連れ去った親が引き渡しに応じなければ、東京、大阪両家裁のいずれかが引き渡しの是非を判断。虐待などで「子の心身に重大な危険」があると認められれば、例外的に引き渡しを拒める。一方で、家裁が強制的に子の引き離しを命じることもできる。逆に、日本から子を連れ去られたケースでは、日本の親が外国の政府機関に支援を申請。その国の裁判で判断される。
日本人夫婦間でも、どちらかが子を海外に連れ去れば条約の対象だが、国籍にかかわらず、国内で起きた「連れ去り」は対象外だ。先月末、東京・渋谷では離婚して子と会えなくなった親たちが、「日本でも連れ去りを禁じる早期の法整備を」とデモ行進で訴えた。
日本の民法では離婚後、親権は片方の親のみに移る。面会交流は、離婚時に取り決めるが、強制力はない。子を連れ出し、養育の実績をつくった親が親権争いで有利になるため、子の奪い合いも起きている。
自民、民主、公明など超党派の国会議員約50人は3月、親子断絶防止議員連盟(会長=保岡興治元法相)を設立した。月1回、当事者や有識者から意見を聴き、法整備を模索する。(杉原里美、田村剛、ワシントン=大島隆)
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〈ハーグ条約〉正式な名称は「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約」。16歳未満の子が無断で国外に連れ出された場合、子を元々住んでいた国に戻し、誰が面倒をみるかを裁判で決めるよう定めている。加盟国は、日本を含めて91カ国。子を連れて帰国した日本人の母親が、外国人の父親に子を会わせない事例が多いとして、欧米諸国が日本に早く加盟するよう強く求めていた。アジアは韓国、タイ、シンガポール、スリランカが加盟する。中国は香港、マカオのみで、本土には適用されない。
更新 2014-04-03 (木) 19:40:26
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